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博物館法について

「東京国立博物館」は平成13年4月1日から「独立行政法人国立博物館」となった。行政改革のあおりを受けて、東京国立博物館、京都国立博物館、奈良国立博物館の3館が統合され一つの組織となったのである。民間の会社統合・合併と同じで、重複する組織・人員を整理して、効率的な運営を図ろうというものである。「独立行政法人」というのは、一般にはあまりなじみのない名前だと思うが、独立行政法人通則法によれば、以下のような組織を言う。

独立行政法人通則法(一部)

第一章 総則
    第一節 通則
 (目的等)
第一条 この法律は、独立行政法人の運営の基本その他の制度の基本となる共通の事項を定め、各独立行政法人の名称、目的、業務の範囲等に関する事項を定める法律(以下「個別法」という。)と相まって、独立行政法人制度の確立並びに独立行政法人が公共上の見地から行う事務及び事業の確実な実施を図り、もって国民生活の安定及び社会経済の健全な発展に資することを目的とする。
2 各独立行政法人の組織、運営及び管理については、個別法に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。
 (定義)
第二条 この法律において「独立行政法人」とは、国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業であって、国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、民間の主体にゆだねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるもの又は一の主体に独占して行わせることが必要であるものを効率的かつ効果的に行わせることを目的として、この法律及び個別法の定めるところにより設立される法人をいう。
2 この法律において「特定独立行政法人」とは、独立行政法人のうち、その業務の停滞が国民生活又は社会経済の安定に直接かつ著しい支障を及ぼすと認められるものその他当該独立行政法人の目的、業務の性質等を総合的に勘案して、その役員及び職員に国家公務員の身分を与えることが必要と認められるものとして個別法で定めるものをいう。


となっている。これを読んで今までの「博物館法」に定める博物館とどう違うのか、素人の私にはとんとよく分からないが、訪問した博物館や研究機関の職員達の話から察するに、国の管轄からはずれて(国から金が出ない)どうやら独立採算に制になるとの事のようだ。しかし純粋な財団法人や民間団体とは違うし、無論営利団体ではない。システムや各管理部門を統合したりして、効率化は図れるのだろうが、予算が削られて展示物の収集や研究に支障はでないのだろうか。努力でそれを補え、と言う事か。
「独立行政法人国立博物館法」は以下のようになっている。(一部)

第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、独立行政法人国立博物館の名称、目的、業務の範囲等に関する事項を定めることを目的とする。
(名称)
第二条 この法律及び独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号。以下「通則法」という。)の定めるところにより設立される通則法第二条第一項に規定する独立行政法人の名称は、独立行政法人国立博物館とする。
(国立博物館の目的)
第三条 独立行政法人国立博物館(以下「国立博物館」という。)は、博物館を設置して、有形文化財(文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)第二条第一項第一号に規定する有形文化財をいう。以下同じ。)を収集し、保管して公衆の観覧に供するとともに、これに関連する調査及び研究並びに教育及び普及の事業等を行うことにより、貴重な国民的財産である文化財の保存及び活用を図ることを目的とする。
(特定独立行政法人)
第四条 国立博物館は、通則法第二条第二項に規定する特定独立行政法人とする。
(事務所)
第五条 国立博物館は、主たる事務所を東京都に置く。
(資本金)
第六条 国立博物館の資本金は、附則第五条第二項の規定により政府から出資があったものとされた金額とする。
2 政府は、必要があると認めるときは、予算で定める金額の範囲内において、国立博物館に追加して出資することができる。
3 国立博物館は、前項又は附則第六条第一項の規定による政府の出資があったときは、その出資額により資本金を増加するものとする。
第二章 役員
(役員)
第七条 国立博物館に、役員として、その長である理事長及び監事二人を置く。
2 国立博物館に、役員として、理事三人以内を置くことができる。
(理事の職務及び権限等)
第八条 理事は、理事長の定めるところにより、理事長を補佐して国立博物館の業務を掌理する。
2 通則法第十九条第二項の個別法で定める役員は、理事とする。ただし、理事が置かれていないときは、監事とする。
3 前項ただし書の場合において、通則法第十九条第二項の規定により理事長の職務を代理し又はその職務を行う監事は、その間、監事の職務を行ってはならない。
(役員の任期)
第九条 理事長及び理事の任期は四年とし、監事の任期は二年とする。
(役員の欠格条項の特例)
第十条 通則法第二十二条の規定にかかわらず、教育公務員で政令で定めるものは、非常勤の理事又は監事となることができる。
2 国立博物館の非常勤の理事及び監事の解任に関する通則法第二十三条第一項の規定の適用については、同項中「前条」とあるのは、「前条及び独立行政法人国立博物館法第十条第一項」とする。


これらの法律は、HPの中にある。独立行政法人国立博物館
ここをこまめに読んでいくと面白い。役員月次報酬なども絶対額が載っている。理事長は1,106,000円 、理事は937,000円から1,025,000円まで 、となっている。一般職員の給料もテーブルになって掲示されている。国家公務員とはいえ、HPで給料を知られるというのは何かかわいそうな気も・・・。

独立行政法人国立博物館役員報酬規程
平成13年4月2日
国立博物館規程第2号

第4条 常勤役員の俸給月額は、次のとおりとする。
理事長   1,106,000円
理事   937,000円から1,025,000円までの範囲内で理事長が決定する額
(調整手当)
第5条 調整手当は、独立行政法人国立博物館職員給与規程(以下「職員給与規程」という。)第11条第1項及び第3項の規定に基づく職員に対する調整手当の例に準じて、常勤役員に対し支給する。
2 調整手当の月額は、俸給月額に、東京都台東区に在勤する役員にあつては100分の12を、京都府京都市に在勤する役員にあつては100分の10を、奈良県奈良市に在勤する役員にあつては100分の3を乗じて得た額とする。

参考までに、一般職員のテーブルはこちら。 → 独立行政法人国立博物館職員給与規程別表


現在、各種国立機関が「独立行政法人」化を求められている。「聖域無き改革」をスローガンに掲げる小泉内閣のもと、猫も杓子も、改革!改革!と叫んでいる。国立大学もその対象に入っており、大学人達は目下必死の反対運動を続けているが、やがて国立博物館と同じ運命をたどるのだろう。宮崎にある国立航空大学校や、多くの国立商船大学校は、既に独立行政法人になっている。
勿論行政改革は必要だし、非効率な機関や役所はどんどん統廃合されるべきである。しかしながら、国立の博物館などを安易にそう言う法人にしていいものだろうかという気もする。独立行政法人化する事で、何が大きく変わるのかちょっとまだ定かではないが、せめてここ上野の「東京国立博物館」あたりはそのまま従来通りの国立でもいいのではないかという気がしないでもない。
イギリスの大英博物館などは見学者からの「志」にその運営費用を頼っているし、博物館のあり方を巡ってはもっと国民間で広く議論すべき問題なのかもしれない。



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