Music:The long and widing road

邪馬台国の動物・植物


邪馬台国の動物




		魏志倭人伝の中に現れる動物が何種類なのかは実の所不明である。そんな馬鹿な!と思われる向きもあるかも
		しれないが、実はそうなのだ。というのも、倭人伝の中の漢字が何を指しているのか解らないものがあるので
		ある。動物学者の実吉達郎氏は19種類とされているが、それでも19種類と約を付けてある。勿論、明ら
		かに人名や地名と思われるものや、植物の名前の中に含まれるものは除いてある。例えば名とか号とかで
		ある。蚤虱(ノミ・シラミ)の事と思われる「き蝨(しつ)」(き:ワープロでどうしても探せない漢字:倭人
		伝原本(?)のページを参照)にしても、ほんとにノミ・シラミの事なのか、寄生虫なのか、それともただ単
		に汚いものを指しただけなのか判然としないのである。
		明らかに動物を指していると思える言葉で、倭人伝に現れる語としては、鹿、魚、蛤(貝類全般?)、(あ
		わび?)、蚕、咬龍、大魚、水禽、おお(この字もない)猿、黒雉、このくらいである。大猿はニホンザル
		の事で、朝鮮・中国の猿に比べて大きいという説と、魏の使者がたまたま大きな猿を見たものだ、とか諸説ある
		が結局は猿だろう。黒雉も、朝鮮のコウライキジに比べてニホンキジは確かに黒いのでことさら黒キジと書い
		たものだ。鹿、大魚、水禽、蛤、蚕、魚、鰒は特に問題ないだろう。問題は咬龍である。この語をめぐっては
		諸説入り乱れている。入れ墨の記事と併せ考えて、ウミワニや鮫という説が大方の意見のようである。
		動物から考察すると、これらの記事についても南方の海洋国家の事であるという意見の方に分がありそうであ
		る。

		倭人伝は、倭にいない動物として牛馬虎豹羊鵲(カササギ)を挙げている。これにも異論がある。実吉氏も、
		牛馬が居なかったはずがない、と述べている。弥生時代の地層からは牛馬の骨が出ているからいた事は間違い
		ないが、魏の使者にどうして見えていないのだろうか? 
		これをめぐっても諸説ある。魏の目から隠したとする説や、使者は日本にはそもそも来ていない、とする説な
		ど色々と面白い。
		吉野ヶ里からはブタの骨も出土しているので、縄文人・弥生人が家畜としてブタやを飼っていたのは間違い
		ないと思うし、牛馬も居たのである。しかし、牛馬を労働力として使いこなすにはまだ至っていなかった。野
		生にはいたが、家畜としての牛馬はずっと後の時代になってからではないか? その為、魏の使者はたまたま
		見過ごした、という所が真実ではなかろうか。










邪馬台国の植物







		さて、動物の次は植物であるが、これも何種類書かれているのか判然としない。その理由は以下のようなもの
		である。
		@、倭国の樹木について書いてはあるが、現在我々がよんでいる名前と同じ樹木なのか? 魏にあった樹木で
		  似たものの名前を当てている可能性がある事。
		A、記録したのは魏の使者が見た範囲に限られている事。山へ上ったり川の畔を観察して記録したものとは思
		  えず、訪問途中の目に入ったもののみを記録している事。また、茗荷などを食べていない、と記録してい
		  るところを見ると栽培されていたものを記録したのではなさそうである。
		B、樹木の名前を書いた文字の解釈によって、同じものか違うものか解らない事。楠と樟は中国では違う樹木
		  だが、日本では同じものしかないとされる、即ちクスノキである。植物学者として著名な牧野富太郎は、
		  中国では楠の字であらわされる植物は真性のクスノキではないとしている。

		倭人伝に現れる植物で、現在判明している樹木・草木としては以下のようなものが挙げられる。字と読み方、
		現在の名前を解っている範囲で表記してある。

漢字読み方現在の樹木名(諸説)コメント
禾稲かとうイネ水稲のみでなく陸稲も指していた、と思われる。
紵麻ちょまアサ・イチビ麻で定説。カラムシ、ラミーという意見もあるがこれらは野生の麻と言ってよい。
たんクスノキたん、ではなく"なん"とする説もある。なん、だとすればタブノキという説が有力。
ちょトチ・クヌギ・ナラ諸説により植生が大きく異なってくる。つまりトチは照葉樹林帯上部、クヌギ・ナラは下部となり、
山と平野と分かれるのである。
豫樟よしょうクスノキ前出のクスノキとは種類が異なるものであろう、とされている。
ぼうボケ後生渡来した本ボケではなく、倭国に自生していたクサボケという説が有力。
れき/くすクヌギクヌギでほぼ定説。
とうスギ/マキ/カヤ諸説により異なる。右辺が皮という字の間違いでヒと呼ぶとスギである、という説。日本書紀はマキとする。
橿きょうカシカシでほぼ定説。イチイガシとされている。
烏号うごうヤマグワクワ属のヤマグワ以外にハナズオウとする説もある。ハナズオウとはマメ科の植物だが日本にはあまり無い。
楓香ふうこうカツラ/カエデ/フウ牧野富太郎はフウだとする。(サンマク科フウ属フウ)
じょうシノダケ竹。メダケ属、ササ属の細竹全般を指すのだろう、と言われている。
かんヤダケこれも日本に自生する細竹。日本の竹は殆どがこの幹(上に竹冠がつく)である。
桃支とうしカツラダケかずらだけ、籐竹、とかの意見もあるが、シュロであるとする説もある。
きょうショウガ倭人伝には、滋味なるを知らずとあるので栽培したものでなく自生の生姜。
きつタチバナ/クネンボ/ミカンミカン・クネンボは自生しないので、九州に多いタチバナである、との説もある。
しょうサンショウ山椒。中国、朝鮮、日本の暖林帯に広く自生する。
襄荷じょうかミョウガ茗荷。中国から日本にかけて広く分布している。





邪馬台国大研究・ホームページ / INOUES.NET / 邪馬台国の動物・植物