SOUND: 冬の夜  魏志倭人伝

「魏志倭人伝」という書物は無い。正確には「魏志」という本もない。
史書の名でいうと「三国志」があるだけである。三国志は,三世紀後半に晋朝の修史官,陳寿によって編集された 魏・呉・蜀 の歴史を扱った書である。この本の中の魏について書いた物を魏書又は魏志と呼び,その中に,魏から見た廻りの諸国について書いてある部分があり,これを「東夷伝」と呼んでいるが, この中に高句麗,馬韓,弁韓,辰韓等の諸部族について記した部分があって,その列伝の最後に「倭」について記述した部分があり,この部分を便宜上「魏志倭人伝」と呼んでいるのである。従って,魏がことさら倭だけを取り上げて書き記した訳ではなく,東アジア全体の様子を書き残したついでに,倭の事も 書き加えたという程度なのである。
約二千の漢字で記されたこの部分に,邪馬台国と卑弥呼という語が現れる。これらの文字を巡って幾百年に渡り論争が続いている。

また今日では、この倭人伝の原本は存在していない。今日伝えられる三国志は全て後世の写本であって、幾種類かの写本がある。しかもやっかいな事に、写本により用いられている文字が異なったりするのである。従って、どの写本をテキストとするかによってもその研究の内容が異なってくる。 そこで、その写本だけでは決定できず他の膨大な史書の、文字の用法や意味合いを比較検討するといった事も必要になってくる。倭人伝をまともに研究しようとすると、おそろしく膨大な時間と資料を必要とするのである。






         
邪馬台国大研究・ホームページ / INOUES.NET / 魏志倭人伝