Music: Never Falling Love Agin
魚津埋没林博物館
富山県魚津市釈迦堂
1998.11.21(土)
最終氷河期の最寒冷期(約1.8〜2万年前)は、海水面は現在よりも100mほど低く,日本列島は大陸と
陸続きだった可能性もある。(現在では、対馬海峡は朝鮮半島とは直接繋がっていなかったとする説が有力。
その場合、氷河が海峡を覆っていたので人や動物は渡ってこれたらしい。)その後の温暖化で海面が上昇し
現在の水位に落ち着くまでの間に、多くの縄文時代の遺跡が水中に没したと考えられる。大陸棚は、かって
そこまでが陸地であったことを裏付ける資料であるし、各地の水中で発見される縄文時代の土器や遺物や埋
没林は、そこがかって陸地だった時代の証拠なのだ。富山県で、富山湾の魚津港改修工事の際に海底で発見
された魚津埋没林も、その貴重な資料である。そのころはまだそこが陸上に広がる森林だったことを示して
いる。約2千年前、片貝川の氾濫によって流れ出た土砂がスギの原生林を埋め、その後海面が上昇して海の
底に沈んだ樹根の林である。
埋没林は、その森林が生育していた場所全体が地下に密閉され、木の株だけでなく種子や花粉、昆虫などが
残っているため、過去の環境を推定する大きな手がかりとなる。通常木材は、空気中では20年程で腐って
しまうが、純粋な水の中では、条件さえよければ数万年も腐りもせず保存される例もある。昭和55年に、
同じく富山県入善沖の水深約20m〜40mの海底で発見された高さ約20cmの多くの樹幹は、調査の結
果約1万年前の森林の跡であることが判明している。これは現在の所世界最古の記録であり、立木の状態で
現存する世界でただ1つの資料である。この海底林は、残念ながら見ることはできないが、樹幹のサンプル
が富山県入善町の沢スギ自然館等に展示されている。入善沖の海底林や魚津埋没林周辺は、それぞれ黒部川、
片貝川扇状地の扇端部にあたり、地下水が豊富な地域で、厚く積もった堆積物が酸素を遮断し、純粋な地下
水が細菌の繁殖や植物の分解を防ぐことで、樹根が1万年もの長期間にわたり守られてきたのである。
魚津埋没林博物館には、埋没林が発掘された場所、状態でそのまま保存・展示されている。昭和30年(1955)
に開館し、平成4年(1992)に新装再オープンした。縦8m、横16m、深さ2.5mのプールの中に埋没林
が保存、展示されている。この水中展示館は、海中で樹根が発見されたそのままの状態で、周囲に展示館を
建設し保存したのだ。これらの樹根は現在国の特別天然記念物に指定されている。博物館の施設としては他
に、「テーマ館」、樹根を乾燥展示している「乾燥展示館」、「ドーム館」、蜃気楼展望台などがあるが、
圧巻は何と言っても「水中展示館」である。ハイビジョンホールでは、300インチの大スクリーンで、富
山湾の奇観蜃気楼のオリジナル番組も上映されている。
この博物館はこれまでの博物館とは一寸趣が違う。巨大な樹根を展示してあるのだがなんと海の中にあった
のである。しかもはるか2,000年前の縄文時代からそこにあった。
蜃気楼の町として知られる富山県魚津の海から、この樹根が発見されたのは昭和5年の事であった。埋没林
はいずれも海面下に残されており、かってはここが地表面であった事を示している。埋没林は大部分が杉で、
最も大きなものは直径4m、周囲12mで樹齢500年と見られるものなど、大小200株余りが発掘され
た。昭和11年には国の天然記念物、30年には特別天然記念物に指定された。
この博物館ではこれらの樹根を、一部海の中にあったままの状態で展示している。はるか縄文時代に生えて
いた杉の根っこを、我々はガラス越しに海の中に見る事ができるのである。
ここに保存されている樹根の最大のものは、端から端まで約10m、幹の部分の直径約2m、樹齢500年
以上と推定されている。このプールは、昭和27年に発掘された場所をそのまま利用しており、中の樹根は
当時のままの場所にある。プールの中の水は、地下水(真水)をポンプで汲み上げたもので、プールの中には
自然の地下水も湧いているそうだ。
館内全体がひんやりした空気に包まれている。周りが海であるし、館内も床面が「水面下1m」などの水位
表示があるように、海の中なので空気が冷たいのだろう。地下に降りると観察窓から、樹根の様子を観察す
ることができる。正面の大きな水槽の中には四方に根を張った巨大な樹根が三体鎮座している。古代からこ
の冷たい地下水に包まれて眠っているのだ。大きいだけの木の根のような気もするが、2000年前からそ
こにあったと言うと何か不思議なものを見るような気がする。縄文時代ここら一帯は杉の林だったのか?
海岸線は何処にあった? 縄文人達はこの根っ子を踏んだりしたのだろうか? 水の中に沈んで横たわって
いる樹根を見ていると、次第に引き込まれて海の中へ入って行きそうな気になるから不思議だ。
この地方の現代の森とそこに住む動物たちのジオラマを、実物大の大きさでみる事もできる。
日本海側地方の太古の様子が、展示廊下に掲示されている。
博物館を出るとすっかり暗くなっていた。今夜の宿は黒部の「たなかや」である。さぁ、どんな旨い肴で
一杯やれるのだろう。今夜の麻雀の勝利者は果たして誰か?
季節がよければ(春から初夏が一番いいそうである。)蜃気楼を見れたのに残念だ。
【施設概要】
■乾燥展示館 昭和5年に発掘された樹根を乾燥展示
■水中展示館 昭和27年に発掘された樹根を水中展示
■テーマ館 300インチの大型スクリーンで「しんきろうの神秘」を上映
■ドーム館 平成元年に発掘された樹根を展示
■常設展示通路
【展示情報】
■所在地 〒939-0631 富山県魚津市釈迦堂814
■アクセス JR北陸本線魚津駅・富山地方鉄道新魚津駅下車1.5km
(タクシーで5分 徒歩で25分) 北陸自動車道魚津I.Cより3km(車で10分)
■利用時間 午前9時〜午後5時(入館は4時30分まで)
■休館日 冬季期間12月〜3月中旬まで月曜日、祝日の翌日休館 12月29日〜1月1日休館
■利用料金 個人 一般 510円 小・中学生 250円 団体 一般 410円 小・中学生 200円
■問合せ先 魚津埋没林博物館 TEL:0765-22-1049 FAX:0765-23-9105
邪馬台国大研究・ホームページ/ 博物館めぐり / 魚津埋没林博物館