月に吠える −筑前・時事評論あるいはボヤき  by Inoue Chikuzen

	2.平成17年10月21日(金曜日) −中国・西安旅行−

	平成17年9月の3連休、私の所属する歴史倶楽部の第100回例会で西安に行った。われわれの興味はもちろん歴史散策なのだが、滞在
	した3泊4日のなかで、私なりに感じた現代中国の様相についての感想を述べてみたい。



	現代中国は大きな混沌のなかにあると思う。急速に発展を遂げた経済力を背景にして、社会主義国家として世界の大国にのし上がろうとし
	ているが、その行く末にははなはだ疑問を持たざるを得ない。いずれは自由主義経済へ移行せざるを得ないのではないかという気がする。
	それもその時期はそんなに遠い未来のことではないように思える。経済活動は殆ど自由経済の様相を呈しているし、このまま一人っ子政策
	を推し進めていけば、50年後には中国の民力は現在の半分以下になってしまうという西側アナリストの観測があり、それは中国指導部も
	認識済みという報道もある。この政策(一人っ子政策)はもう破綻することが目に見えているのだ。そもそも、国家が国民の出産などに制
	限を課すべきではないし、人道的にも問題がある。そのような国家はまだまだ先進国ではないと思う。

	急成長する産業界の需要にエネルギー供給が追いつかず、他国との軋轢を覚悟での油田掘削も急ピッチで進めている。もちろん、大気汚染
	などの環境問題には目をつむったままである。この分野については中国は開き直っているようにも見える。「おまえらは散々環境を汚して
	おきながら、発展が一段落したら、環境、環境と他国の発展を妨げようとするのか」というわけである。著作権や特許問題なども同様であ
	るが、開き直って先進国が行き着いた最新テクノロジィーを根こそぎ取得しようとしているように見える。自動車は都会の道路をところ狭
	しと走り回っているし、万里の頂上でも人々は携帯電話を使っている。一見最新テクノロジィーを上手に使いこないこなしているように見
	えるが、実は日本や西欧諸国とは大きな違いがある。それは発展過程である。西欧諸国や日本では、今日の最新技術はさまざまなインフラ
	の積み重ねや技術的な試行錯誤を繰り返して獲得したものである。ラジオしかない時代からTVの発明、そしてカラーTVやクーラー。
	道路にしても、誇りだらけの穴ぼこ道路から4,50年を費やして立派な高速道路を建設してきた。その間に、人々の意識もそのインフラ
	の整備と同歩調で変化してきたのだ。つまり、テクノロジィーを使いこなす社会的なノーハウが出来上がっているのである。

	これに反して中国では、最新技術(ハードウェア)は導入できたものの、それを使用・管理する法整備や社会的規範や道徳(ソフトウェア)
	がついて来ていない。道路を横切る人や自転車の群れにそれは象徴されている。こんな国では信号ができても人々はそれを遵守するはどう
	かははなはだ心もとない。また違法コピーや海賊版なども、成果物を生み出すに至る長い過程をまったく理解できていないから、その価値
	も理解できないのである。これは、戦後の日本とはだいぶ状況が違うように思う。西欧や日本は、いちおう近代国家としての歩みを徐々に
	身につけたのに対し、中国はいきなり封建国家から近代国家へやってきた。江戸時代から平成へ飛んできたようなものだ。中国が真に近代
	国家となるためには、これらのソフトウェアを、全国隅々の国民に浸透させる必要がある。それができて初めて、中国は先進国の仲間入り
	ができると言えるだろう。

	夜ホテルでTVを見た。寝付くまでに時間があり、本や音楽の類は持参していないので、半ば仕方なく眺めたといってもいいのだが。中国
	語はわからないし、その意味でも眺めたというほうが正しいか。チャンネルは実に多い。3、40局はあるだろうか。一晩中放映している
	局もある。番組の内容は、すっかり日本・韓国あたりと変わらない。時代劇(三国志のようなもの)や現代劇や、歌番組やクイズのような
	ものもある。視聴者参加番組のようなものまであった。この分野は急速に西欧・日本などに追いつきつつあると感じた。もちろんCMもあ
	る。え、社会主義の国で?と思うが、シャンプーからジュースから車まで、大衆消費財のあらゆるものが宣伝されている。そして、驚いた
	点もいくつかある。

	CCNXというチャンネルでは、画面の左上隅に「CCNX内蒙古」という表示があったので、蒙古地方の局から放映しているのだろうと
	思うが、現代人の歌手が歌う草原情歌のような歌のバックに、蒙古の情景が延々と映し出されるのである。風渡る草原やそそと流れる小川、
	大草原に点在する天幕の家(ゲル)などなど。歌の歌詞は、「父なる草原よ、母なる河よ、はるかなる故郷よ。」と、切々と歌っていた。
	この歌の時は日本語のテロップが流れていた。中国のような多民族国家では、このような民族的なチャンネルが必要なのかと思った。いま
	の中国も、漢民族がいわば武力で他民族を支配しているようなものだから、慰撫的な意味があるのかもしれないと思ったものだ。

	またあるチャンネルでは、静止画のCMばかりを次々と流しているのだが、そのなかに病院の宣伝があって、これは漢字の羅列でほぼ意味
	はわかるのだが、な、なんと、驚くなかれ「処女膜再生」と堂々とうたってあるのだ。そして「XXX医院」とある。驚いてしまった。
	昔の日本のように、再生する事に価値があるのもオドロきだが、その再生が商売になるほど、すでに失ってしまった女の子たちがたくさん
	いるということでもある。洋の東西、社会体制などには関係なく、若者の衝動はまったく同じということだろう。

	CCTV1というTV局は、朝から晩まで24時間、第二次大戦における日本軍の悪行を流し続けている。NEWS映画の画面を使って、
	延々と放映し続けているのだ。731部隊などは、NEWS映画やスチール写真を使って、いかに日本軍が非道の限りを尽くしたかを強調
	している。しかも日本軍関係者の実名を流し、石井四郎などという名前はこれを見ている中国人の頭の中にいやでも叩き込まれるに違いな
	い。中国人はおおらかだとか、大陸的で懐が深いなどといわれるが決してそうではないことがわかる。表面上は大人を装っているが、その
	実、過去を水に流したり、過去は忘れて新しい関係をなどとは決して考えていない。受けた傷は絶対忘れまいとしている。これでは真の
	「友好」は築けまい。

	むしろ、これらの悪行・非道の行為を風化させてはいけないのは日本の方であると思うが、それは一旦置くとしても、これでは一般の中国
	国民が日本に対して好感を抱くはずがない。日本のTVチャンネルが、戦後のアメリカ軍の悪行・蛮行ばかりをいまでも放映し続けていた
	としたら、今ほどのアメリカとの親交が結べたとはとうてい思えない。糾弾すべきは糾弾し、責めるべきは責めて、その上で友好関係を築
	こうとしたからいまの関係があるのだと思う。戦後日本の復興が、アメリカ軍の支援によるものだという事は、ほとんどの日本国民は知っ
	ている。だからこそ親近感を抱いているともいえる。翻って中国は、ODAによる支援や、戦後保障を放棄していることは国民には知らせ
	ず、最近は日本からのODAをそのまま中国からのODAとして東南アジア諸国に回したり、反日や排日感情を黙認・助長するような政策
	ばかりを採っている。最近では、中国の対日政策は「日米関係寸断」にあると中国政府高官が発言している。こういう状況をみるにつけ、
	もし今後第三次世界大戦が発生するとすれば、それは米中戦争ではないかという気になる。

	(期せずして、2005.10.19、YAHOOのHPに、中国が攻めてきたというNEWSを捏造して流したやつがいた。もちろんこれは犯罪になるのだ
	ろうが、けだし、機を見るに敏なやつのイタズラだといえる。)

	一月後の、news。

	ヤフー装い虚偽の記事掲載容疑、長崎市の男逮捕 警視庁 asahi.com 2005年11月28日11時15分

	 インターネットサイト「ヤフー」のニュースサイトを装った画面に「中国軍 沖縄に侵攻」との虚偽の記事が掲載された事件で、警視庁
	は28日、長崎市■■■、無職■■■■容疑者(30)を著作権法違反の疑いで逮捕した。容疑を認めているという。■■容疑者は事件が
	報じられた直後にヤフーなどに「悪ふざけでやった」とメールを送るなどしており、ヤフーが告訴していた。 
	 生活経済課などの調べでは、■■容疑者は10月、ヤフーのニュース速報ページを自分のパソコンに取り込み、ニュース内容を改ざんし
	た画面をインターネット上で公開し、ヤフーの著作権を侵害した疑い。同容疑者はコンピュータープログラマーの経験があったといい、
	「ネット世界で注目を浴びたかった」などと話しているという。 
	 うその記事は「【アメリカ18日共同】」と共同通信社の配信を装い、「アメリカ国防総省は、中国から日本(沖縄県)に中国軍が侵攻
	したことを発表した」などと記載。別のネット上の掲示板に「こんな記事がある」と書き込み、リンク先としてこの画面を紹介していた。
	うその記事には約6万7000件のアクセスがあった、という。 


	<Asahi.com 中国最新ニュース>  「民主政治建設」 中国が民主政治白書を発表

	中国政府は19日、「中国の民主政治建設」と題した白書を発表した。民主化運動の弾圧などに対する米国の批判をかわす狙いがあるとみ
	られる。民主政治の「主人公」は国民だが、それを「指導」するのは共産党という主張が貫かれている。 
	民主政治は「政治文明が発展したことの成果で、世界各国の人々の普遍的要求」だが、「外圧で強化されるものではない」とした。中国は
	「政治体制の改革」にも取り組んできたと強調し、「特色ある社会主義と民主政治の建設」が進んでいると説明した。 (2005/10/20)



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