Music: Locomotion
第1日・2日目 到着・カヌーで仲間川を遡る
私のANAのマイルが60,000を超えた。英国旅行、韓国旅行に加え、国内出張が重なっていつの間にか60,000マイルに
なっていたのだ。今年いっぱいで期限が切れるのが20,000マイルあるので今年中に使ってしまおうという事になった。
最初、帰省中の娘とWIFEで台湾に行こうかと言っていたが、息子が「俺は!」と言うのでじゃ家族全員で国内旅行にし
ようという事になった。
突然、頭の中に西表島が浮かんだ。ダイビング、カヌーと、やったことのない遊びを突然やってみたくなった。ほんと
は与那国島の海底遺跡を見たかったのだが、その前に一度、50歳を過ぎてもダイビングなどができるものなのか試し
て見たくなったのだ。「その頃はもう帯広へ帰りたい」という娘を説き伏せて、INTERNETでホテルを予約し、船の便を
予約し、ダイビングショップに予約を入れて、何とか親子4人の「南の島マリンレジャー・夏休み」が実現した。
西表までは沖縄経由なので一人20,000マイル必要で、仕方ない一人は正規料金で行くか、と思っていたが、WIFEが仕事
の関係で9月の初めにユタ州のソレトレークシティーへ行ったので、一挙にその問題も解決した。何しろ正規に航空券
を購入すれば、大阪−石垣は一人7万なんぼである。4人で30万円もかかる。それが今回はタダなのである。マイル
って何といい制度なんだろう!
上空から見た石垣島(上左)と石垣港の電話BOXと案内塔。
予約したホテルは「ラ・ティーダ西表」(沖縄県八重山郡竹富町字南風見508
番地の205 TEL:09808-5-5555)と言い、平屋2軒続きのコテージ風の部屋で、食事、shoppingなどはメインの棟へ行っ
てとる、という外国風のしゃれた所だ。後で他のホテルや民宿も見みたが、WIFE 曰く、「ここが一番いいね。」
中庭にプールもあり、我々が泊まった部屋から2分で海にも行ける。着いた日、早速海へ行って泳いだ。水槽で見る赤や
青の熱帯魚が体の廻りで泳いでいる。海岸は規制があって手を加えてはいけないそうで、全く自然のままだ。
泳いだ後はプールで塩を流し、1分で部屋へ帰れる。レストランはメイン棟の2階にあり、イタリアレストランだったが、
我々が滞在した3泊4日の間パスタは1回しか出なかった。西表の魚介類をふんだんに使った海鮮料理が主で、大満足。
窓からは西表の珊瑚礁が見えた。
16日。朝9時半にカヌー教室のインストラクターのお姉さん二人が、ホテルまでワゴンで迎えに来た。同じホテルから
他にも参加者がいた。10分ほどで仲間川に着く。
仲間川の河口は広い。引き潮と満ち潮ではまるで違う景観になるが、満ち潮の時の河口は海のようである。我々のカヌー
体験は、河口の東側、「マリンレジャー金盛」(沖縄県八重山郡竹富町南風見仲29-28 TEL 09808-5-5378)という所で
お世話になる。半日コースと一日コースの被講習者が集まって説明を受ける。一日コースは、我々家族と東京から来たO
L2人組の計6名で、それぞれ2人乗りのカヌーに乗り込んで、インストのお姉ちゃんも入れて4艘で仲間川を遡る。
5,6分も練習すればカヌーを操れるようになる。後は体力との勝負である。「途中でリタイヤしたくなったらどうした
らいい?」と質問すると、真っ黒に日焼けしたインストのお姉ちゃんは、そんな質問を受けたことなどないようで一瞬ギ
ョッとしたが、気を取り直してキッとした顔で「そんな事は許しません!」と仰った。
漕ぎだしてすぐ、川の両岸が見たこともない光景なのに気づく。TVでよく見る、一面のマングローブ林だ。根が水面か
ら高くせり出しているやつだ。自分の目で見ると確かに異様な木である。どうしてこんなものが、と思ってしまう。
マングローブとは、熱帯、亜熱帯地方の海岸、入江、河口泥湿地で、満潮時に海水に浸る場所に生育しているヒルギ類の総
称である。マングローブという名前の木があるわけではないのだ。その汽水域の塩分濃度に応じて、生育するマングロー
ブが違ってくる。島には、大小いくつもの川があり、そのほとんどにマングローブを見ることができる。中でも島の北部
を流れる浦内川と南を流れる仲間川は有名で、上流5〜6Kmまで、マングローブ林を観察できる。西表島には、オヒル
ギ・メヒルギ・ヤエヤマヒルギ・ヒルギモドキ・ヒルギダマシ・ヤマプシキ・ニッパヤシの7種類が観察されている。見
わけ方はさまざまで、葉、花、種子などを見て、分ける方法が一般的だそうだ。マングローブは、地球の温暖化を防止す
る働きもある。大気中の主成分は窒素と酸素がそれぞれ78%と21%の割合で溶け込んでいる。二酸化炭素やフロンな
どは温室効果ガスとよばれ、大気の温度を高めて地表全体を暖める効果があるが、地球は、工業の発達や人口の増加によ
り二酸化炭素が毎年増え続けており、世界的な環境問題となっているのは周知の事実だ。マングローブなどの熱帯雨林は
光合成作用により、酸素を大気中に放出し、二酸化炭素を取り込む働きがある。マングローブは、他のどの森林よりも、
地球の温暖化を防止する働きがあると言われている。仲間川のマングローブ林の面積は108haにも及び、「仲間川天然保
護区域」と国の指定を受けている。マングローブの北限は奄美大島である。
途中でマングローブ林に上陸して、オオシジミを獲る。めちゃくちゃデカイ貝だ。大人の両手の指を広げてやっと全周を
たどれる位の大きさだ。お姉ちゃんによれば、中の貝の身そのものは蛤くらいで、後は泥だという。従って1週間くらい
泥抜きしないと食べられない。普段は1、2個見つかればいいくらいだそうだが、この日はぼろぼろ見つかり10数個の
大漁だった。「こんなツアーは珍しいですよ、みなさんよっぽど運のいい方達ですね。」とインストのお姉ちゃん。
もちろん、全部元の泥の中に戻して、再び仲間川を遡る。
縦歩きもする珍しいカニや、片側だけ巨大なハサミを持ったカニ、ムツゴロウに似たハゼなど珍しい動物もたくさんいる。
漕ぎだして程なく、大きな鳥が川面を横切っていく。白と黒のトンビのようだ。インストのお姉ちゃんが興奮して叫んだ。
「カンムリワシだ!カンムリワシですよ。ほらほら。」「なんて人たちなんだろう、みなさん今日はツイてますよ。」
「さっきのオオシジミと言い、カンムリワシと言い、私が1年かかって見るものを、みなさん今日はぜんぶ見てますよ!
すごい、すごい。」
ところがそれから5,6分してまたカンムリワシが横切ったし、赤いカワセミ「アカショウビン」が川面を滑って行った。
Bird Watcherの私としては歓喜にむせぶ場面だが、インストのお姉ちゃんはもう絶句していた。
この冠羽のせいでカンムリワシという名前が付いているのだ。
【カンムリワシ】
カンムリワシは、日本では西表島や石垣島にのみ生息している。最近の調査では西表島で100羽、石垣島で95羽合計
195羽生息している。カンムリワシは特別天然記念物で、国内希少野生動植物種であるため、何重にも法律によって保
護されている。これまでに交通事故で何度かカンムリワシが死亡したりケガをしたりしているそうだ。カンムリワシは道
路上に出てきたカニやカエルなどをよく食べるため、地上に降りたときに交通事故に遭うのだと言う。カンムリワシは西
表島の生物たちの食物連鎖の頂点にいるため天敵はいない。しかしカラスに追いかけられている時もあると言うので、あ
まり強いというわけではなさそう だ。どこでもそうだが、野生動物の天敵は車を含む人間と言うことになるのだろう。
カンムリワシは地上でも獲物を探すようで、これは野原でカエルを捕まえている図
しばらく行くと、観光船の船着き場があって、ここから内陸部へ10mほどの所に、大きなサキシマスオウの木がある。
カヌーもここから上陸できる。サキシマスオウもマングローブの種類で、一番高く成長するのは最も内陸側に生えるオヒ
ルギの種類である。しかし、その高さはせいぜい8〜10mで15mを越すのはめずらしいと言われている。この仲間川
流域のサキシマスオウノキはマングローブ林後方に生えるのが特徴で、高さが約20m板根の広がりが126.5平方m
(77畳敷)で樹齢は約400年とも言われている。
場所は、河口から約6Km程上流である。観光船は潮の干満により不定期の運用だそうだが、ここから先へは行かない。
ここから河口へ引き返すのだ。
実際にこの目でサキシマスオウの木を見ると、これが植物の根だとはとても信じられない。説明版によると、かってはこ
の根を切り取って船の舵に使っていたと言う。堅い根なのでその用途に耐えられたのだろう。もちろん今は保護されてい
る。
ここで食べきれないほどおかずの入ったお弁当を食べた。全部平らげたのは、息子だけだった。食べ終わって一服してい
ると観光船の客がドヤドヤと上陸してきたので、早々にこの場を立ち去り、さらに上部を目指してカヌーに乗る。
濁っていた川が次第に澄み切ってくる。真水の領域に入ったのだ。カヌーの終点まで行けば水が飲めますよ、とお姉ちゃ
ん。
カヌーではもう登れない地点までたどり着いて砂浜にカヌーを挙げる。「仲間川の源流まではここから8kmくらいです。」
との事<だが、とてもそこまでは登れまい。しばらく川を徒歩で歩くことにする。途中で、別の支流から来た一団と一緒
になる。インストのお姉ちゃんはその組のインストとは知り合いのようだ。程なく川の中に、岩で囲まれた天然のプール
が幾つも出現した。みんな童心に帰って服などおかまいなしに泳ぎ出す。水着を付けず普通の格好で参加していたお姉ち
ゃんも、スカート、パンツ丸出しで泳ぎだした。大自然を前にすると、人はほんとに子供に返ってしまう。
帰りは、サキシマスオウの木があった船着き場に船が迎えに来ていた。カヌーを船に引っ張り上げて、ものすごいスピー
ドで河口へ戻っていく。潮が満ち、我々が上陸した浜辺も、両岸に見えていたマングローブの根っこも水の下になってい
た。
カヌーを漕ぎながら流れてきたマングローブの種を拾って、整理するインストのお姉ちゃんとマイドーター。種は葉巻を
太く長くしたような格好をしている。水につけとくだけで結構育ち、立派な観葉植物になるそうだ。娘は北海道へ持って
帰り、友達へのお土産にすると言って、丁寧に分別している。帰りに空港でこの種を売っているのを見たが、3本で1,000
円だった。
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