数限りない巻貝や二枚貝が生命力ゆたかに描写されている。群魚図でも、鱗の一枚一枚まで精密に描いた鯛や、吸盤が指に引っ付き そうな生々しい蛸などに驚かされるが、一つ一つの貝についても実に丹念に観察しているのがわかる。この絵の海洋生物たちも、見 ると右から左へ移動しているように見えなくもない。群魚図も蓮池遊漁図も、みな魚たちは右から左へ急いでいるように見えるが、 これらの絵が、「釈迦三尊」に向かって右側に掲げられ、生き物たちはみなお釈迦様の元へはせ参じているように描かれているので はないだろうか。そんな論評にはついぞお目に掛かったことはないが、しかし、若冲自身も当初から「動植綵絵」全体構想を固めて いたわけではないようなので、或いは素人考えかもしれない。