「釈迦三尊像」と「動植綵絵」は、画家であると同時に敬虔な仏教徒でもあった若沖が、亡き両親と弟・妹、そして自分自身の永代供養
	を願って相国寺に寄進したものである。「釈迦三尊像」は、京都・東福寺に張思恭筆として伝えられる「釈迦三尊像」を見た若沖が、そ
	れに感激し模写した作品である。従って全く同じ構図となっているが、東福寺の伝張思恭筆「釈迦三尊像」は、現在、「釈迦如来像」が
	米国クリーブランド美術館に、「文殊菩薩像」と「普賢菩薩像」は静嘉堂美術館にそれぞれ所蔵されている。
	若沖はよく古画を模写しているが、丹念に忠実に再現するという模写ではなく、所々改変を加えた模写になっており、それは若沖の特色
	でもある。この釈迦如来像にしても、須弥座の左側で合唱する従者の袈裟が、伝張思恭筆本では黄土色に朱の縁といういわば地味な模様
	であるのに対して、若沖は黄土色に朱で亀甲模様を描き、その中央に白で縫い取りを施すという瀟洒なものに仕上げている。この手の変
	更は列挙に暇がなく、若沖画のほうが年代が新しく、しかも高価な最高の画材を用いていると言うこともあって、この「釈迦三尊像」も
	伝張思恭筆本より若沖画の方が、その鮮明さ華麗さにおいて勝っているという意見が多い。

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