絹本着色。若冲が得意とした鶏図の代表作。尾を逆立てた雄鶏と、首をかく雌鶏。紺と白のアジサイ、バラ、ツツジが咲き誇る。幻
	妖な二羽とかれんな花との対比がドラマチックな効果を生んでいる。自然に対する観察眼と想像力が幻想的世界を生み、極細密の技
	術が非現実の世界に不思議な生命感を生み出していると言える。なぁんちゃって、評論家みたい。家業を離れて画家生活に専念した
	40代初めの作品。若沖と言えばこの絵が紹介されるほど有名な一幅。大胆な構図、鮮やかな色遣いが見るものの心を掴んで離さな
	い。
	思うに若沖は、いわゆる日本画家ではなく、今日で言うデザイナー、イラストレーターなどのグラフイック・アーチストとしての素
	養を多く持っていた画家なのではないかと思う。絵の構図は当時としては斬新で大胆だし、伏見にある「石峯寺」の裏山に並ぶ五百
	羅漢は、若沖がデザインして近隣の石工達に掘らせたものだが、それらの持つ表情はどれもが素朴で個性的な顔立ちをしており、若
	沖が単なる絵師ではない事を証明している。若沖は、40歳までいわば嫌々商売を続けているが、世間から隠居してもいい歳とされ
	ている不惑になったとたん弟に家督を譲っている。その間商売は勿論、世俗のあらゆる事に興味が無く、ただただ絵と仏教にだけ興
	味があったという。隠居後の若沖は、まるで水を得た魚のように製作に没頭する。「奇想の」とか「奇人」とか形容される若沖だが、
	アーチストとは本来そういう人種なのかもしれない。

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