「釈迦三尊像」三幅と「動植綵絵」三十幅は、計三十三幅全てが揃って若沖の意図した構図となる。今回の展覧会は、釈迦を中心に
	生きとし生けるものが廻りをとりかこむ「極楽浄土」を意図した若沖の思いが、120年ぶりに再現したという事になる。そこには
	人間が全く居ないのが、いかにも若沖らしくていい。「動植綵絵」は若沖の代表作と言うことになっているが、鳳凰、孔雀、鴛鴦、
	鶏、鶴などの鳥や、牡丹、紫陽花、葡萄などの花々は言うに及ばず、蝶や蟷螂などの昆虫、蛸や鯛、貝類などの海洋生物、はては蛙
	や蛇など、さまざまな動植物が美しく描かれたこの連作を見て、それに異を唱える人はおそらくいないだろう。それほどこの三十幅
	の描く世界は異彩を放っている。これを見て心動かされない人は、おそらく何を見ても感動しないのではないかと思う。

	「釈迦三尊像」三幅と「動植綵絵」三十幅は、相国寺の観音懺法(かんのんせんぼう)という、「観音を招いて1年の罪を償い、観
	音様に懺悔を誓う」という儀式に開示されて、一般の人々にも公開していた。その際は、「門前市を成す」ものすごい行列で、多く
	の出店が出たそうである。現在、観音懺法の時にどのような序列で展示していたのか、順番を記した資料の行方が不明である。従っ
	て今回の展示は、相国寺の見解としての展示になるが、118年ぶりに三十三幅が一堂に展示される、貴重な機会であることは間違
	いない。

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