絹本着色。赤、白、ピンクの牡丹が増殖して画面を覆い尽くし、得体の知れないエネルギーに満ちあふれている。評論家達に言わせれば、 若沖の特色として、「空間恐怖」とか「空間充填趣味」というものがあるらしいが、これなどはその最たるものであろう。画面一杯の牡 丹と小手毬は、なるほど空間があってはいけないという思いに駆られたようにも見える。上の絵では見えにくいが、二羽の小禽の視線の 先には小さな虻か蠅のような昆虫が飛んでいる。署名と落款を押す場所のみを残して、残りを埋め尽くすと言う発想はどこからきたもの だろう。この絵全体がなにか西陣織や加賀友禅のような、反物や着物の柄のような気がする。