黒を基調とした雄鶏が、大地に二本の足をしっかと踏みしめて威風堂々立っている。上部には南天がたわわにその赤い実を実らせ、 小禽がその実を啄んでいる。羽毛は全て黒一色に統一されているが、よく見ると濃淡、輝度などで巧みに描き分けてある。若沖の 絵の中でも、これは意匠性が極めて高い、つまりデザイン的な作品ではないかと思う。釈迦の廻りにつどった禽獣というような仏 画的な絵ではなく、何か占いに使うトランプの裏絵のような感じだ。中央の白い菊の花のような円が絵全体のアクセントになって いる。