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歴史倶楽部 123回例会
見晴台遺跡・見晴台考古資料館
6月30日(土)



	ここも私は、1999年9月に訪れた。個人的に「東海弥生の旅」にはまっていた頃で、名古屋から静岡、横浜と弥生遺跡を訪
	ねて歩いていた頃だ。もう8年も前になるのか。その時の模様は巻末にリンクがあるので、例によって興味のある人はどうぞ。

	清洲から名鉄で名古屋へ戻り、地下鉄桜通線で「鶴里」へ。ここから10分ほど住宅街の中を抜けていくと見晴台遺跡である。
	小高い丘の上にあり、今は遺跡全体が笠寺台地公園になっている。途中に「櫻田貝塚」の碑があった。




	上左は、桜八幡社の境内。古代の年魚市潟(あゆちがた)や万葉人に想いをはせる「桜田へ田鶴鳴き渡るあゆち潟しほひにけら
	し田鶴鳴き渡る」の碑が立てられている。駅から南西約500メートル、市立桜台高校東の八幡神社あたりは東南に傾斜した高
	台で野並から鳴海にかけての山山や年魚市潟を展望できる美しい景勝地であった。

	「櫻田貝塚」。台地の縁辺に立地する弥生時代後期から古墳時代にかけての貝塚で、幅約3メートル、深さ2.5〜3メートル
	の溝の中に形成されており、名古屋市の指定文化財となっている。見晴台遺跡はここから約250メートル南である。




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	<見晴台遺跡(弥生集落)>
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	この遺跡からは20,000年前の旧石器時代の石器も見つかっている。その後縄文時代晩期(3,000〜2,300年前)後半の貯蔵穴、土
	器片などが確認されているが、集落としての規模が顕著なのは弥生時代後期から古墳時代初期にかけて(1,900〜1,600年前)で
	ある。台地全体を環濠で囲み、多くの竪穴式住居跡が発掘されているが、何度も建て替えられているため住居の総数は不明であ
	る。環濠の中からは弥生時代終末期の土器が多量に出土しているので、環濠はこの頃(3世紀末)埋められたと推定できる。集
	落は約 200年間ほど続いたようである。土器以外にはめぼしい出土品はない。石鏃、石斧、石包丁が数点、他には魚の骨や貝殻
	等である。この為、この遺跡にはさしたる権力者や首長は居なかったのでは無いかと推測できる。又、墓や水田跡なども現在の
	ところ発見されていない。
	笠寺台地は古代から開け、縄文・弥生・古墳時代の遺跡も多く、遺物も多数発掘されており、見晴台遺跡資料館が昭和54年10月
	に笠寺公園の中に建設された。見晴台遺跡や市内の他の遺跡の発掘調査を行い、調査の結果や出土したものを展示している。
	映画会や講演会なども定期的にひらかれており遺跡の保存と活用の場として重要な役割を負っている。また「遺構観察舎」には
	竪穴式住居が復元されている。








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	見晴台考古資料館
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	この遺跡(資料館)でのおもしろい試みは、発掘に市民を参加させている事である。資料館建設の翌年から毎年夏に希望者を募
	り、資料館の事業として、名古屋市教育委員会が実施する生涯学習事業の一環として、発掘作業を行っている。19次発掘から市
	民が参加し現在39次を重ね、新たな装飾品(ヒスイ)の発見など成果を上げている。毎年の発掘の成果は報告書として装丁され、
	資料館で販売されている。日頃なかなか目に触れることの少ない考古学の発掘調査に、実際に参加できる貴重な機会だが、特に
	発掘調査のほぼ全期間に渡って参加する発掘体験は、全国的に見ても珍しい。 





入り口からみた展示室の様子






	見晴台(みはらしだい)遺跡は、旧石器時代から中世にかけての遺跡である。もっとも栄えたのは、弥生時代後期(約2,000年前)
	から古墳時代前期(約1,500年前)にかけてで、台地の上にムラが作られた。台地の周囲には幅4m、深さ4mの大きな濠がめぐら
	されている。この台地は、熱田台地、御器所台地、名古屋台地と連続して早くから人が住み、弥生式土器の北限であり、隣接する
	三河以東は縄文文化が色濃くのこっている。弥生時代は、大陸から米作りや金属器が伝わった時代で、当時の人々は竪穴住居にす
	み、狩猟と採集に加え、農作業をして生活をしていた。見晴台遺跡ではこれまで180軒以上の竪穴住居跡が発見されている。そ
	のほとんどが重なりあっていることから、何回も建て替えられたようである。南面の森では、今もボランティアを募集して発掘作
	業がおこなわれている。発掘作業は事前の申込み制で、手伝いたい人は電話で問い合わせれば参加できる。




	見晴台考古資料館周辺は公園になっており、緑の多い良く整備された外観である。内部の展示は時代ごとの特徴の説明がパネルで
	わかりやすい。ここは台地のため戦時中は高射砲陣地であり、今も台座が近代史の遺跡として保存されている。西、南面は古代に
	年魚市潟(あゆちがた)と呼ばれた海である。 
   


昭和16年に発見された「銅鐸型土製品」。珍しいこの土器が発見されて見晴台遺跡は広く知られるようになった。






	企画展「みはらしだいと市内遺跡発掘展」  開催期間:6月27日(水)から9月24日(月)  

	6月27日より「みはらしだいと市内遺跡発掘展」がはじまりました。この展示は昨年度におこなった名古屋市内の遺跡の発掘調査
	を速報で紹介するものです。 昨年度は、古墳の斜面に葺かれた葺石や巨大な濠(ほり)がみつかった白鳥塚古墳、埴輪列がみつか
	った大久手5号墳、高蔵遺跡ではめずらしい横穴式石室の調査、粘土製の棺(陶棺)がみつかった H-115号窯など、名古屋の古墳時
	代について新たな発見が多くありました。
	注目される遺物としては、川東山遺跡で出土した土器棺、高蔵遺跡の石室からみつかった須恵器、H-115号窯でみつかった陶棺が
	あります。なかでもH-115号窯の陶棺は全形は復元できませんでしたが、箱状の身と寄棟状の蓋からなる屋根形の陶棺であること
	がわかりました。是非ご来館いただき、間近でご覧ください。

	【主な展示品】

		川東山遺跡(守山区) 土器棺・土師器 
		平手町遺跡(北区)  弥生土器・骨製針 
		富士見町遺跡(中区) 弥生土器・須恵器
		瑞穂遺跡(瑞穂区) 弥生土器・山茶碗
		高蔵遺跡(熱田区) 弥生土器・須恵器
		白鳥塚古墳(守山区) 石英・須恵器
		大久手5号墳・大塚2号墳(守山区) 埴輪・須恵器
		白鳥1・8号墳(守山区)  須恵器
		H-115号窯(千種区)  須恵器・陶棺
		名古屋城本丸御殿跡(中区)  瓦・釘
		名古屋城石垣(中区)  緑釉瓦


川東山遺跡出土の土器棺

















高蔵遺跡(第55次)の横穴式石室出土の須恵器











H-115号窯出土の陶棺
















	見晴台は笠寺台地東南端近くにあり、かっては海(年魚市潟)に面していた。台地上は全体が弥生時代〜古墳時代の集落跡であ
	るほか、鎌倉〜室町時代は隣接する笠寺観音の寺地として、僧房か寺関係者の住居群があったと思われる。毎年夏に実施する発
	掘調査の結果、多量の土器・陶磁器や貝・骨などの自然遺物が出土し、当時の生活を物語っている。

	<見晴台考古資料館>
	●開館時間 午前9時15分から午後5時 
	●休館日  毎週月曜日(休日にあたるときはその翌日)  毎月第4火曜日(休日を除く)  年末年始(12月29日から1月3日) 
	●入館料  無料 
	●所在地  名古屋市南区見晴町47 電話 052-823-3200  ファックス 052-823-3223
	●交通案内 名鉄電車「本笠寺」下車 東へ徒歩10分 地下鉄「鶴里」下車 南西へ徒歩15分 
		  市バス「笠寺西門」下車 東へ徒歩7分  「弥生町」下車 西へ徒歩7分
	●駐車場  21台(うち1台は身障者用)・無料

	資料館の隣に覆屋の観察舎が立てられていて、掘立式住居を保存してある。住居1棟も復元されている。


	◆住居跡観察舎
	弥生時代の竪穴式住居跡の実物大模型が展示されていて、内一軒は家屋が復元されている。模型に立ち入ることはできないすが、
	家屋は裏側の一部がカットされているので中が観察でき、当時の生活の様子もわかるようになっている。また、観察舎の内壁には
	多くのパネルが掛けられ、どんな経緯でこの遺跡が発掘されたのか、どんなところがこの遺跡のポイントなのかが、写真・図を交
	えて説明されている。



発掘した竪穴住居跡の実物大レプリカを展示してあり、住居跡が重なって出土しているようすがよくわかる。



復元住居。中に入る事はできないが、説明板の説明で造りを理解する事ができる。





遺構跡。200棟以上の住居跡が発見された。ただそれらのほとんどは重なって発見されており、何度となく建て直されたものらしい。






	弥生時代の濠跡の一部を再現したもので、道路によって寸断されていた地点の擁壁をかねて復元してあり、環濠の跡をV字型に
	保存してある。ムラ村を守るための周りに濠を張りめぐらし、濠の大きさは幅、深さとも約4メートルを超え、断面は鋭いV字
	型をして、更に外側に土塁を築き、飛び越えることも這い上がることも出来ないよう堅固につくられていた。弥生時代後期にム
	ラ同士の戦いが行われていたということである。 



	<笠寺公園(かさでらこうえん)>
	南区の西部、笠寺台地の南端に位置し、面積約3ヘクタール、高さ約15メートルの平坦な舌状大地を中心とした公園。敷地内
	には見晴台遺跡が含まれ、天気の良い日は、レジャーを目的に集まるファミリーで賑わう。また、夜景が望めるので、デートコ
	ースにもお勧めのスポットらしい。










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