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大阪本町・歴史倶楽部 ANNEX 
沖縄・史跡と考古の旅
〜 2018年2月 沖縄の旧石器人と南島文化を訪ねる 〜

ガンガラーの谷(サキタリ洞、武芸洞) バスを降りてジャングルのような道を進んでいくと、だんだん下方へ下がって行った所に、大きな鍾乳洞の入り口が見えてきた。鍾乳洞 の入り口前は広場になっていて、3、40人は入れそうなカフェが営業している。広場に椅子、机を置いて観光客を呼んでいるのだ。 驚いた。こんな遺跡は初めてだ。我々の駐車場には、中国や韓国からの大型バスが目白押しだったので、このカフェはこれらの客を満足 させる施設なのだろう。 鍾乳洞を奥へ進んで、縄文や旧石器の遺跡を見学してそうな人はほとんどいない。我々考古ツアーの一団は、カフェを無視して鍾乳洞の 中へ入ってゆく。鍾乳洞へ入ってすぐの右側も発掘中だった。 ガンガラーの谷入り口 カフェのパラソルが見える。 ガンガラーの谷は、数十万年前の鍾乳洞が崩れてできた太古の谷である。2万年前の人類「港川人」その居住区の可能性から発掘調査が 継続され、これまでに世界最古となる約2万3千年前の釣り針が発見されている。 数十万年前までは鍾乳洞だった場所で、洞窟や亜熱帯の森はとても神秘的な雰囲気を醸し出している。写真のケイブカフェはツアーで無 くても入れるが、それ以外は見学ツアーでしか入れない。一般の見学者はガンガラーの谷ツアーは予約が必要。1人2500円。 谷は鍾乳洞が崩壊してできた自然豊かな谷間であるが、沖縄の国土そのものがサンゴ礁の石灰岩地帯が隆起したものである。その上に拡 大していった亜熱帯の森や洞窟等をガイド付きで散策できる。琉球時代から地元の人々に信仰されてきた場所でもある。 沖縄県の職員であり、発掘現場責任者の山崎さんの説明を聞く。発掘中の遺跡には縄文人の痕跡があると言う。さらに10mほど進んだ 右手の窪みから、約2万年前、世界最古の釣り針が出土した。同時に、カニや貝類の夥しい遺物、2万年前の人骨、縄文時代人骨などが 発見された。ここは「サキタリ洞遺跡」と名付けられている。 この谷全体が巨大な鍾乳洞で、雄樋川に沿って延々と続いている。前述したように、酸性の土壌に広く覆われた本土の旧石器遺跡からは、 石器以外の遺物は殆ど出土しないが、このサキタリ洞遺跡では、旧石器人たちが貝殻を加工して石器の代わりに道具(貝器)として用い ていたことが判明した。同じく2万年前の地層から、炭化物とともに、モズクガニの爪やカワニナ、カタツムリが大量に出土し、これら は旧石器人たちの食料だったと考えられる。 約1万8000年前に生きていたとされる「港川人」が住んでいた場所ではないかと発掘調査が行われており、近年色々な発見があった。 2014年には、ガンガラーの谷の一角にある「サキタリ洞遺跡」で、貝で作られた鋭利な道具や装飾品、人骨など39点が出土し、国内最古 となる9000年以前のものと判明した。 約1万4年前の地層からは、人骨とともに、石英製の石器が発見された。サキタリ洞周辺には石英は分布しておらず、30km以上離れ た沖縄県中北部に分布することから、そのあたりから運ばれてきた物と思われる。同じ地層から、15mmほどの巻き貝(マツムシ)に 穴を開けてひもを通し、ビーズとして使用された(と思われる)ものも出土したが、土器は発見されていない。しかしこの上部の縄文時 代層からは、石器に混じって、縄文時代早期の無紋土器のかけらが出土している。    人骨は、1万4千年前も2万年前のものも歯の一部で、それ以外の人骨は出土していないが、サキタリ洞遺跡からは、縄文早期のほぼ全 身分が揃った約9千年前の人骨が出土しているし、武芸洞遺跡では、縄文晩期(約2500年前)の石棺墓と、そこに埋葬されていた完 形の人骨が出土している。また縄文早期の人骨の頭部には、30cmほどの石灰岩の礫が人為的に並べて置かれ、我が国における最初の 埋葬人骨である可能性が高い。これらの人骨は、沖縄博物館・美術館で実見できる。    ここに掲示した発掘品の写真並びに地図等は、参考資料の「沖縄県南城市サキタリ洞遺跡の発掘 沖縄県立博物館・美術館」および、 「島に生きた旧石器人 沖縄の洞穴遺跡と人骨化石 山崎真治 新泉社」から転載している。深謝します。 ガジュマルなどの亜熱帯植物が生い茂り、ジャングル探検をしているかのよう。上が雄樋川。 崖上から根を伸ばす大木「ウフシュガジュマル」。大主(ウフシュ)大主ガジュマルは迫力満点!推定樹齢は150歳ともいわれ、そのたたず まいはまるで森の長老だ。 谷の底を流れる雄樋川。旧石器人や縄文人は、ここでカニやウナギを獲っていたのだろう。 イキガ洞にある鍾乳石は子孫繁栄にご利益ありとされる。ま、早い話が○○ポである。 谷全体を、本土とは違う植生の木々たちが覆い、周りの光景も全く本土とは異なる。これが沖縄か、と思う。ジャングルだ。この遺跡は 現在も発掘調査中であり、今後も新たな発見が期待されている。鍾乳洞をさらに30分程歩いて林の中を行くと、材木で階段と展望台が 作ってあり、登るとジャングルに囲まれた付近の風景が展望できる。 木の上に設置された展望台は見晴らし抜群で、遠く周りが一望でき、次に行く「山下第一洞窟」の林も、明後日行く予定の「港川遺跡」 方向が見えていた。 最後は古代人の居住跡へ。武芸洞は約7000年前の土器や約3000年前の人骨が発見されたことから、古代人が実際に生活した場所とされて いる。
 邪馬台国大研究/歴史倶楽部/例会ANNEX 沖縄・旧石器人の旅 第一日目