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塔の首遺跡
平成15年10月11日(土曜日)






比田勝港




	塔の首(とうのくび)遺跡
	国指定遺跡(昭和52年2月指定)弥生後期(紀元1〜2世紀)から古墳時代前期の埋葬遺跡で、4基の箱式石棺を持つ。

	比田勝港のすぐ側にある。港まで徒歩5分くらいのところである。上対馬町比田勝港の北東、西泊湾をのぞむ低い旧岬上
	にある弥生後期の墓地で、箱式石棺4基からなる。遺跡のすぐ下に大きな説明板があり、この遺跡の説明、出土した遺物
	について解説してくれている。説明板わきのコンクリート段を昇っていく。ここも10mほどの小高い丘で、尾根が突き
	出た突端に箱式石棺がむき出しになっている。三根遺跡といい、今まで見てきた対馬の遺跡は、全て海に付き出した小尾
	根の先端にある。上対馬は対馬の最北端に位置し、韓国とは50kmいう短距離にあり、釜山港と比田勝港とは不定期で
	はあるが、小型高速船「あをしお」が1時間30分で運行している。


 

日が落ち、相当薄暗くなってきたが、何とか説明板は読むことができた。

 





	
	説明板によると、この遺跡は地元の小学生によって発見された。弥生時代後期から古墳時代前期の埋葬遺跡で4基の箱式
	石棺がある。昭和46年の発掘調査によると、2箇所の石棺から細形銅剣・銅釧(腕輪)・各種の玉類(管玉・水晶玉・
	8000箇におよぶガラス小玉)、及び朝鮮からもたらされたと見られる土器類などが出土。又、床石だけになっていた
	石棺の床面から鉄斧と漢式鏡(方格規矩文鏡)も出土した。石棺の中には、女性の歯7個も見つかっている。この石棺が
	埋められたのは、紀元1−2世紀頃で、邪馬台国・卑弥呼時代以前と推定される。 

 

 

 



	
	現在1号墳は失われているが、その他の2号墳から4号墳の石棺が残存している。対馬特有の幅広銅矛の他、土器として
	は朝鮮式の無文土器と北九州系の弥生土器の両方が出土している。特に注目されるのは、第3号棺から発掘資料としては
	初例の広形銅矛2点があり、しかも弥生式土器および韓国陶質土器とともに発見されたことである。このことは、広形銅
	矛の年代が明確になったこと、韓国の土器と日本の土器の年代比較が可能になったことを意味し、日韓文化の交流を如実
	に示すものとして注目される。ここから朝鮮半島や大陸と、日本との交流が頻繁にあった事が類推される。ここから朝鮮
	半島まで50km、北九州へはその倍以上ある。古代、対馬の民は、船を操って東シナ海を自由に行交し、交易に精を出
	していたに違いない。

 

 
「私が死んだらちょうどいいくらいの墓ですね。女性か子供の墓ですねこれは」、とちせちゃん。

3号墳の現状と、出土時の状況・出土物。


 





 

	
	対馬は朝鮮半島や大陸に近いことから、太古より九州本土への文化伝来の経路(中継地)であった事は想像に難くない。
	対馬の気候は、暖流である対馬海流が、対馬で二分されて北上していることから、年平均気温約15度と比較的温暖であ
	る。年間降水量は適量で自然の植生は豊かだが、岩屑の多い地質は荒くて保水性が悪く、梅雨の後、秋までの間に降雨が
	ないと水が涸れ、また秋に台風が通らない年は、現在でも冬になって渇水することがある。また耕作面積の少なさから人
	口密集度の高い地域はない。このような自然環境と条件は、おそらく古代にあっても同様だったのではないかと思われる。
	だとすれば、壱岐の「原の辻」のような集落は対馬には存在していなかった可能性がある。即ち、大陸や半島からの使者
	が、一時逗留して情報収集に当たるような、いわゆる駅のような機能は持ち合わせていなかった。あくまでも中継地点と
	しての役割が強い島だったと見ることができよう。





	
	しかしながら見てきたように、夥しい数の銅矛の出土など、対馬独特の祭祀もあった。それはおそらく島を取り囲む外洋
	の神をなだめ、南北への航海の安全を祈願する祈りであったはずだ。そして、大陸・半島から、北九州から往来する他部
	族の民と融合し、平和裡に物事を進めていく願いも込められていたに違いない。後世の宗家にも見られるように、この島
	にはこの島なりの、大きな歴史の流れの中をうまく立ち回る術が、遙かな古代から必要とされていたのであろう。



これらの墳墓は、そういう祭祀を取り仕切っていた上対馬の首長一族のものかもしれない。

 





上3枚の写真は、厳原の「対馬歴史民族資料館」にあるこの遺跡からの出土物。




すっかり暮れてしまった対馬の夜。到着した国民宿舎。


今夜の宿、国民宿舎「上対馬荘」。まぁまぁの宿だった。比田勝港を見下ろす丘の上に立つ。
上対馬高校出身の若い、おもしろい仲居さんがいた。


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